インドネシアのジャングルで偶然撮影された
マカクザル「ナルト」の自撮り写真をめぐり
自撮り写真を撮影したカメラの所有者である
自然写真家とアメリカの動物愛護団体
動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)が
この自撮り写真の著作権を巡って争っていた
裁判はサンフランシスコの連邦裁判所による
「動物に著作権保護は適用とされない。
このサルに写真の著作権は認められない」と
判断、PETA側が上訴を断念したことで
2年にも及ぶ訴訟に決着がついた形となった。
※下の画像が「ナルト」の自撮り写真である。
WILDLIFE PERSONALITIES by David J Slater
この訴訟の発端は2011年
インドネシアのスラウェシでイギリス人の
自然写真家デイビッド・スレイター氏が
絶滅危惧種のクロザルを撮影していた際
放置されていたカメラに動物達が興味を持ち
このカメラを使ってサル達が遊び始めた事が
サルの自撮り写真という偶然を生んだ。
この奇跡的な一枚の写真が口コミで広まり
インターネットなどで拡散された事で
この写真の著作権を巡って論争が始まった。
著作権は自分にあると主張するスレイター氏
写真の使用料を払わないのは違法であり
経済的損失を被ってきたと主張し
ライセンスフリーの画像などを提供する
ウィキメディア・コモンズに対し
「ナルト」の写真を削除するように要求
しかし、削除要求されたウィキメディア側は
人間ではなく動物によって撮影された写真は
パブリックドメインに属すると主張し
スレイター氏の要求を拒否したのである。
この両者の争いに加え、2015年
動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)が
クロザルの「ナルト」に代わり
この写真の著作権所有を求める訴訟を起こし
著作権法は作品を作った者に対して著作権を
付与するものであり
そこに生物の種類の制限は無いはず。
著作権法はカメラを所有する人間ではなく
写真を撮った存在に権利を与えていると主張
これが「サルの自撮り」を巡って巻起こった
動物に財産権が認められるのかが争われた
前代未聞と言われた裁判の全容です。
個人的な意見としては、意外性のない結末
「やっぱりね…。」という結果でしたが
動物を「物」として扱うのか
動物にも権利を与えるのかという論争の中
世界中の注目を集め続けていたこの裁判は
野生動物たちの存在をアピールするうえでも
意味のあるものだったのではと思います。
又、原告が動物という珍しい裁判は1995年に
奄美のクロウサギやオオトラツグミ
アマミヤマシギ、ルリカケスを原告とした
「アマミノクロウサギ訴訟」というものが
土地開発で生存を脅かされた動物達に代わり
住民たちの方々が動物の生存権を主張して
開発の差止めを求める裁判というものが
日本でも過去に行われた事がありましたが
日本の場合は動物に訴訟を訴える資格はない
法律は人を対象としたものであり
法律で認められる権利が帰属するのは人だけ
という判断から訴えを却下したそうですが
住民たちは、天然記念物や絶滅危惧種などに
指定されている奄美の固有種たちを守れない
不甲斐なさから予想された結果と解りつつも
現行法では自然環境を保護することの困難さ
その限界を世間の人たちに知ってもらおうと
訴訟を提起されたのだそうです。