いのちのリレー 〜供血犬がつなぐ奇跡の絆〜

「先生！この子、まだ息があります！」

深夜の動物病院に、緊迫した声が響いた。
担ぎ込まれたのは、まだ若いゴールデン・レトリーバーの男の子。血まみれの毛並み、力なく横たわるその姿は、まるで命の灯火が消えかけているかのようだった。

「交通事故です！車が急に飛び出してきて……避けきれなかったんです……！」
涙ぐむ飼い主の腕には、リードがまだ巻きついている。

「すぐに手術の準備を！」
獣医師が指示を飛ばし、スタッフが慌ただしく動き出す。

「でも先生……この子、もう血が足りません！輸血が必要です！」

そう、この子の命を救うには大量の輸血が必要だった。だが、動物病院に常備されている血液は限られている。ましてや深夜、供血犬の協力なしにこれだけの量を確保するのは難しい。

このままでは、助けられない……！

獣医師の手が震えた。助けたいのに、血液がない——そんな理不尽な現実が、この病院にもあった。

「SNSで呼びかけよう！供血犬を探すんだ！」

スタッフの一人が、すぐさまスマホを取り出し、ツイートを打った。

『至急！供血犬の協力をお願いします！ゴールデンレトリーバーの男の子が交通事故で重傷、大量の輸血が必要です！15kg以上の健康な犬、協力していただける方はご連絡ください！命をつなぐ手助けをお願いします！』

そして、その投稿は次々に拡散されていった——

「います！うちの子が供血犬です！」

最初の反応があったのは、投稿からわずか15分後だった。

「うちのラブラドールが供血できます！今すぐ向かいます！」

続いて——

「シェパードの子がいます！何時でも行けます！」

「ゴールデンが二匹います、どちらも健康です！病院の住所を教えてください！」

次々に届くメッセージに、スタッフの目に涙が滲んだ。

「こんな時間なのに……こんなにもたくさん……！」

SNSを見た飼い主たちが、夜の街を駆けてくる。眠い目をこすりながら、愛犬を車に乗せて。

「助けたい。その一心で。」

そして、病院の前には、供血のために駆けつけた犬たちと飼い主たちの列ができていた——

「この血が、君を救うんだよ」

「よし、すぐに採血開始！」

供血に協力してくれるラブラドールが診察台に乗る。飼い主がその頭を優しく撫でながら、言葉をかけた。

「大丈夫、頑張ろうな。この血が、君を救うんだよ……」

ゆっくりと針が刺され、赤い血液がバッグに流れ込んでいく。

命をつなぐための血。生きようとする力を届ける血。

その尊い血液は、すぐさま手術室へと運ばれ、今まさに生死の境をさまようゴールデンの体へと送り込まれる。

「血圧、戻ってきています！」
「心拍も安定しています！」

小さな奇跡が、そこに生まれた。

供血犬たちの優しさが、命を救ったのだ。