
静かに耐えているだけ。それは“休憩”ではなく、助けを求めるサインかもしれない。
【動物は「待つだけ」でストレスを感じる?動物行動学に基づく集中力・活動限界の真実】
こんにちは。私は現役の動物プロダクション代表であり、日々多くの動物と関わりながら、映像制作やイベントなど多種多様な現場に立ち会っています。
本記事では、製作業界や撮影現場、ふれあいイベントなどでしばしば見落とされがちな、「動物のストレス」と「集中力・活動限界」に焦点を当てて解説します。SEO対策を意識しつつ、専門家の目線と現場感覚の両方を融合し、業界関係者はもちろん、一般の方にも理解しやすい内容にしています。
■ 第1章:動物は「何もしない時間」にストレスを感じている
撮影現場やイベント会場で「動物はただ待っているだけだから大丈夫」と考える人は少なくありません。しかし、これは大きな誤解です。動物にとって、ただ待たされるという行為そのものが非常に強いストレスになり得るのです。
● なぜ「待つこと」がストレスなのか?
動物の視点で考えてみましょう。知らない場所に連れてこられ、知らない人に囲まれ、知らない匂いや音に包まれながら、動かずにじっとしている――。これは、動物にとっては「休んでいる」のではなく、「逃げられない状況で警戒し続けている」という意味です。
これは特に犬や猫、鳥、小動物など、感覚の鋭い種ほど顕著に表れます。
たとえば:
犬:耳や鼻が非常に敏感で、周囲の物音や匂いを絶えずチェックしている
猫:視覚的刺激に非常に敏感で、人の動きに過敏反応を示すこともある
鳥:音や光に驚きやすく、緊張状態が長時間続くと羽毛をむしる行動を見せることも
小動物(モルモットやウサギ):捕食者に対して極度に敏感で、ストレス下では震えたり固まったりする
つまり、「ただ待っているように見える状態」でも、動物は警戒と緊張で心身をすり減らしているのです。
■ 第2章:待機時間=休憩時間ではない
撮影やイベントでは、キャストやセットの都合により、動物が現場に到着してから実際に出番を迎えるまで何時間も「待たされる」ケースが珍しくありません。
このとき、人間側では「動いていないから疲れていない」「クレートに入っているから安心している」と解釈されることがあります。しかしこれは非常に危険な認識です。
● クレート=安心空間ではない
たしかにクレート(バリケン)自体は、動物にとって「慣れた安全な空間」になる場合もあります。しかし、それは以下の条件を満たしている場合に限られます:
そのクレートが普段から使っているものである
匂いが自分のもので落ち着ける
周囲の音や光を遮断できるように布などでカバーされている
十分な換気・冷暖房がある
長時間閉じ込められない
これらの条件が揃っていなければ、クレートは単なる「逃げ場のない閉鎖空間」となり、動物にとっては虐待に近い状況になります。
特に問題なのは、屋外やロケ先で「とりあえず車に乗せておく」「スタッフの脇に置いておく」など、配慮のない待機が長時間続くことです。これは動物福祉の視点からは極めて問題がある対応です。

■ 第3章:動物の集中力・活動限界とは?
撮影において、動物が何度も同じアクションを繰り返すことを期待される場面があります。しかし、動物にも集中力の限界があることを理解しているスタッフはまだ少数です。
以下に、種別ごとの集中持続時間と推奨作業時間の目安を示します。
動物種 | 平均集中時間 | 活動限界(1回) | 1日の合計出演時間(目安) |
---|---|---|---|
犬(成犬) | 10〜20分 | 最大30分程度 | 合計3〜4時間以内 |
猫 | 5〜15分 | 最大15分 | 合計1〜2時間以内 |
鳥類 | 5〜10分 | 最大10分 | 合計1時間以内 |
小動物(ウサギ、モルモットなど) | 2〜5分 | 最大5分 | 合計30分程度 |
● 注意点:短時間でも頻繁に休ませること
たとえ「1日4時間以内」などと記載があっても、それは連続して活動させてよいという意味ではありません。1回の出演ごとに最低15〜30分の休憩を挟み、動物の様子を逐一観察することが必要です。
また、高温・低温、多湿、騒音などの環境ストレス要因がある場合は、出演時間の半分以下に抑える配慮が必要となります。
■ 第4章:現場で実践すべき5つの配慮
現場で動物福祉を守るために、以下のポイントを確実に実行してください。
① 動物の拘束時間を事前に契約・共有
「移動・待機・出演を含めた合計拘束時間は最大8時間まで」と明記した契約を交わし、全関係者に共有することが最優先です。
② 出演可能時間リストを作成・提出
動物ごとに「何分活動できるか」「苦手な環境は何か」を明記したリストを提出し、スケジュール構築時に反映させましょう。
③ スタンバイ時間の分散とピンポイント搬入
待機時間の長時間化を防ぐため、出番直前に現場入りする方法や午前・午後の二交代制を導入するのが理想です。
④ 動物専用控室の確保
控室がない場合でも、エアコン付きの静かなスペースを確保し、視覚的遮蔽ができるように布をかける、音を遮る工夫をしましょう。
⑤ 動物の異常サインに即時対応
震える、目をそらす、吠えなくなる、尻尾を巻くなど、明らかなストレスサインが出たら即休憩または中止の判断を。“やれるからやる”ではなく、“やっていい状態か”を常に見極める姿勢が大切です。

■ 第5章:まとめ 〜「演出のための命」ではなく「共演する命」として扱う
動物は人間の都合で動かされる存在ではありません。集中力やストレス耐性には明確な限界があり、それを超える扱いは健康被害や最悪の場合、命を奪う結果にもつながりかねません。
動物が関わる現場では、演出やスケジュールよりも、まず「命への配慮」を優先すること。これが真のプロフェッショナリズムです。
動物行動学の知見と、動物に寄り添う現場づくりを通じて、業界全体が一歩ずつ変わっていけるよう、この記事が一助となることを願っています。
■ あとがき 〜 命の出演に、誠実な責任を
動物福祉の考え方が社会に広がり、動物を取り巻く環境はここ数年で大きく変化しています。
2022年以降の法改正によって、動物を扱う業者にはより高い管理責任が求められ、動物の貸し出しにおいても、飼養制限・健康管理・記録義務・出演時間の配慮など、多くの制約と義務が課されるようになりました。
これは決して「動物が使いにくくなった」という意味ではありません。
“命を使うこと”への意識が、ようやく真剣に問われるようになってきたという、社会的進歩のあらわれでもあります。
一方で、これまでのように「簡単に借りられる」「安く手配できる」といった感覚で動物を扱おうとすると、
制作側にもプロダクション側にも負担が増え、最終的に**犠牲になるのは現場で耐え続ける“動物自身”**です。
私たち動物プロダクションの立場としては、これからの時代、予算やスケジュールに動物を合わせるのではなく、動物に合わせたキャスティングと制作体制を整えることこそが、プロフェッショナルとしての責任ある選択だと考えています。
無理な使い方で、費用面でも精神面でも苦しめられるのは、言葉を持たない命です。
どうか、動物たちの存在が「ただの演出素材」ではなく、**共に作品を創りあげる“命ある共演者”**として尊重される未来が広がっていきますように。
動物と関わるすべての方が、この課題を「他人ごと」ではなく「現場に立つ者の矜持」として受け止めてくださることを、心から願っています。