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供血犬とは? 〜いのちをつなぐ、静かなるヒーローたち〜

供血犬とは? 〜いのちをつなぐ、静かなるヒーローたち〜

私たち人間と同じように、犬にも輸血が必要になることがあります。事故や病気、大手術の際、大量の出血を伴うケースでは輸血が命を救う重要な手段となります。しかし、日本では犬用の血液が十分に確保されているとは言えず、多くの動物病院では供血犬(きょうけつけん)と呼ばれるドナー犬の協力に頼っています。

供血犬とは、必要な時に健康な血液を提供し、仲間の命を救うために活躍する犬たちのことです。彼らは決して表舞台に立つことはありませんが、その献身がなければ、多くの命が失われてしまうかもしれません。そんな供血犬の存在と必要性、そして供血犬に求められる条件について、詳しくご紹介します。


供血犬の必要性 〜足りない犬の血液〜

動物医療の進歩により、犬の輸血は広く行われるようになりました。しかし、人間のような血液バンクの整備が十分ではないため、多くの病院では輸血が必要な際に血液を確保するのが困難な状況にあります。

輸血が必要になるケース

犬が輸血を必要とする状況はさまざまです。

  • 交通事故や大怪我:重傷を負った際、大量出血による貧血を防ぐために輸血が必要になります。
  • 手術時の出血:摘出手術や大掛かりな治療では、失血を補うために輸血が行われます。
  • 病気による貧血:免疫介在性溶血性貧血(IMHA)や血液疾患では、自己の血液が破壊されるため、輸血によるサポートが不可欠です。
  • 中毒や寄生虫感染:タマネギ中毒やノミ・マダニが媒介する病気(バベシア症)により貧血が進行することがあり、輸血での治療が必要になることもあります。

このように、供血犬の存在は、輸血を必要とする犬たちにとってまさに「命綱」となるのです。

供血犬に求められる条件

供血犬として登録するためには、以下の条件を満たす必要があります。

1. 健康であること

供血犬は定期的に血液を提供する役割を担うため、健康でなければなりません。特に以下の点が重視されます。

  • 伝染病や慢性疾患にかかっていないこと
  • 予防接種(ワクチン・狂犬病)の接種済みであること
  • フィラリア予防をしていること

2. 体重が基準を満たしていること

一般的に、体重15kg以上の犬が供血犬として適しています。十分な血液を提供しつつ、犬自身の健康を損なわないため、この体重基準が設けられています。

3. 若く、落ち着いた性格であること

供血は動物病院での処置が必要となるため、

  • 1歳以上8歳未満の健康な成犬であること
  • 獣医師やスタッフに対して落ち着いて協力できる性格であること
    が求められます。特に、過度なストレスを感じやすい犬は適さない場合があります。

4. 特定の薬を服用していないこと

常用薬を服用している犬は供血できないことがあります。特に、抗凝固剤や免疫抑制剤を使用している場合は不可となります。

5. できるだけ血液型の適性があること

犬にも血液型があり、**DEA(Dog Erythrocyte Antigen)**という分類が使われます。DEA 1.1 陰性の犬はどの犬にも輸血可能な「ユニバーサルドナー」として重宝されますが、すべての犬がこの血液型であるわけではありません。そのため、多様な供血犬の協力が必要なのです。


供血犬としての活動 〜いのちを救う現場〜

1. 供血のプロセス

供血犬の血液は動物病院や血液バンクで採取されます。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 健康チェック(体温・脈拍・貧血の有無を確認)
  2. 採血(頸静脈などから採血し、約200〜450mlを提供)
  3. 休息と栄養補給(供血後は水分補給やおやつで体力回復)

輸血用の血液は保存が効かず、供血犬が定期的に協力してくれることがとても重要です。

2. 供血犬登録の方法

多くの動物病院や血液バンクで、供血犬の登録を受け付けています。

  • かかりつけの病院に相談する
  • 供血犬募集を行っている施設や大学病院に問い合わせる

特に都市部では供血犬が不足しているため、協力してくれる犬が増えることが望まれます。

供血犬への感謝 〜無償の愛で命をつなぐ〜

供血犬たちは、自らの意思で「助けたい」と言っているわけではありません。しかし、彼らが流す一滴の血が、確かに命を救っています。無償の愛で仲間を助ける供血犬の存在に、私たちはもっと目を向けるべきではないでしょうか?

供血犬がいなければ、救えなかった命がある。
その命を救うチャンスを増やすために、あなたの愛犬が協力できるかもしれません。

「いつか、うちの子が輸血を必要とするかもしれない。」
そう考えたとき、お互いに助け合える社会の大切さが見えてきます。

あなたの愛犬が供血犬として活躍できる可能性があるなら、ぜひ一度、供血登録について考えてみてください。命をつなぐ大切な役割を、多くの人に知ってもらい、支えていきましょう。

 

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