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動物取扱業の規制の曖昧さが生む不正…業界の透明性を守るために

動物取扱業の規制の曖昧さが生む不正…業界の透明性を守るために

規制の緩さが招いた苦い経験——なぜ動物取扱業の透明性が求められるのか?

動物取扱業は、動物福祉と公衆衛生、消費者保護の観点から厳格な管理が求められる分野である。しかし、現行の法制度には**「名義変更の曖昧さ」「事業者変更時の不透明性」「行政監視の限界」**という構造的な問題があり、それが悪用されることで不正行為が横行する状況にある。
このレポートでは、筆者の実体験を基に、動物取扱業の規制の緩さがどのようなリスクを内包しているのかを詳細に分析し、業界の透明性確保に向けた対策を専門的視点から提言する。


1. 現行制度の問題点と不正が発生するメカニズム

1-1. 動物取扱業の登録制度の盲点

日本の動物取扱業は**動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)**に基づき、第一種動物取扱業(販売・保管・貸出・訓練・展示)と第二種動物取扱業(非営利目的の取扱業)の登録・許可が必要とされている。しかし、事業者変更時の登録要件が十分に精査されておらず、名義変更が実質的な「居抜き営業」の抜け道として利用されるケースが後を絶たない

❌ 事業者変更時の登録要件の不透明性

  • 事業譲渡や経営権移転に伴う新規登録の厳格な義務がないため、既存の登録情報を書き換えるだけで営業を継続できてしまう
  • 動物取扱責任者の変更は届け出制であり、厳格な審査が求められていない。
  • 行政の監視は主に書類審査ベースであり、実態調査が行われないことが多い

こうした法の不備が、名義変更を利用した違法な事業継続を可能にしてしまっている。

1-2. 不正が発生するメカニズム

動物取扱業の規制の甘さがどのように悪用されるかを、違法な事業継続モデルとして分解すると、次のような流れが見えてくる。

1️⃣ 契約解除・廃業予定の事業者が適切な手続きを進める(筆者のケース)
2️⃣ クライアント(新たな運営者)が、正式な新規登録を行わずに、名義変更で事業を継続しようとする
3️⃣ 行政の監視が書類審査中心であるため、新たな事業者の実態把握が困難
4️⃣ 旧事業者が関与しているかのように見せかけながら、無許可で運営が継続される

このプロセスにより、本来なら新規登録を求められるはずの事業者が、事実上の「居抜き営業」を行うことが可能になる
この結果、適正な手続きを踏んだ事業者(筆者)が不利益を被る一方で、規制を悪用した事業者が利益を享受する構造が生まれている。


2. 名義変更の悪用がもたらす業界全体への影響

名義変更の不正利用は、一事業者の問題にとどまらず、業界全体の信頼性を低下させ、動物福祉や消費者保護に深刻な影響を与える

2-1. 動物福祉のリスク

最新の研究(例えばMellor & Beausoleil, 2020)によると、適切な飼育環境の維持には、知識と倫理観を持つ事業者の関与が不可欠である。
しかし、不正な事業継続が行われることで、以下の問題が発生する。

📌 劣悪な管理環境の継続

  • 行政の監視が適切に機能しないため、動物の健康管理が不十分な施設が野放しになる
  • 不適切な飼養・繁殖が行われる可能性が高まる。

📌 適正な知識を持たない者が運営を引き継ぐリスク

  • 動物取扱責任者が名義貸しの形で変更されるため、新たな責任者の適格性が保証されない。
  • 疾病管理・動物行動管理の専門知識がない者が管理を続ける可能性が高くなる(Yeates & Main, 2011)

2-2. 消費者保護と公衆衛生の問題

動物取扱業者の登録制度の緩さは、消費者にも影響を及ぼす。

  • 「旧運営者が関与している」という誤解を生むことで、消費者が適正な業者を見極めにくくなる。
  • 感染症リスクの管理が曖昧になり、疾病拡大のリスクが高まる(OIE, 2019)

特に、ペット業界では**人獣共通感染症(Zoonotic Diseases)**の管理が重要であり、ずさんな運営が続けば、消費者と地域社会に公衆衛生上のリスクをもたらす可能性がある。

3. 改善策の提言——業界の透明性を確保するために

この問題を解決するためには、事業者変更時の登録プロセスを厳格化し、行政の監視機能を強化することが不可欠である。

🚨 ✅ 事業者変更時の「新規登録」を義務化
→ 事業者が変わる際には、新たな登録申請を必須とし、居抜き営業を防ぐ

🚨 ✅ 名義変更の厳格な監査制度の導入
動物取扱責任者の変更時には、事業者の実態調査を義務化し、不正な引き継ぎを防止

🚨 ✅ 運営実態の定期的なモニタリングの実施
事業者の実際の運営状況を行政が把握できるよう、定期的な現場監査を義務付ける

🚨 ✅ 違反時の罰則強化
適正な手続きを踏まなかった事業者には、営業停止命令や罰金を科すことで、不正の抑止効果を高める。


結論

この経験を通じて、筆者は**「動物取扱業の規制の曖昧さが、適正な事業者に不利益をもたらし、不正な運営を許す土壌を作っている」**ことを痛感した。

動物福祉、公衆衛生、消費者保護の観点からも、業界の透明性を確保するための法改正と監視体制の強化が急務である

この問題の解決が、動物取扱業の健全化と動物福祉の向上につながることを強く願う。