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動物はキャストか? それとも小道具か? 問い合わせ内容で分かる制作現場の本音

動物はキャストか? それとも小道具か? 問い合わせ内容で分かる制作現場の本音

誰が問い合わせてくるかで、動物の扱いが決まる。

動物をキャスティングするつもりの現場と、小道具として考えている現場は「誰が問い合わせてくるか」で判断できる

動物プロダクションに問い合わせが来た際、その内容や誰が連絡してくるかによって、「動物を重要なキャストとして扱うのか?」 それとも 「単なる演出の小道具として考えているのか?」 を見極めることができます。

映画、ドラマ、CM、イベントなど、映像制作における動物の役割は多様ですが、制作側の意図を把握することで、動物の福祉を守りつつ適切な対応をとることができます。
本記事では、問い合わせをしてくる**「人物」** やその**「意図」** を分析し、動物キャスティングの本気度を見極める方法を詳しく解説します。


1. 動物をキャスティングするつもりのある現場の特徴

動物が映像作品において**「重要な役割」** を持つ場合、制作側は慎重にキャスティングを進めます。こうした現場は、動物を単なる背景ではなく、ストーリーの一部として組み込む意思 があり、適切なトレーニングやケアにも関心を持っています。

🎬 問い合わせをしてくるのは…
プロデューサー(制作全体の責任者で、キャスティングの決定権を持っている)
キャスティングディレクター(出演者の選定を担当し、動物も「キャスト」として扱う)
監督・演出家(物語の展開上、動物の演技が必要な場合)
アニマルトレーナーと直接打ち合わせを希望する制作会社の担当者

📌 彼らの問い合わせ内容の特徴

  • 動物の演技について具体的な質問がある
    • 例:「このシーンで犬が特定の動作をする必要があるのですが、どの犬種が適していますか?」
  • 撮影スケジュールや拘束時間について明確な情報がある
    • 例:「◯月◯日に撮影予定で、◯◯スタジオでの撮影を想定しています。」
  • 動物の福祉について考慮する質問がある
    • 例:「撮影時間が長めですが、途中で休憩を入れたり、リラックスできる環境を用意する必要がありますか?」
  • 予算についての具体的な話がある
    • 例:「この動物をキャスティングする場合、ギャラはいくらになりますか?追加トレーニングが必要な場合の費用は?」

🟢 結論:このような問い合わせは、動物を「キャスト」として扱う意思が強い

  • 撮影内容が具体的で、動物の健康やストレス管理も考慮されている場合、キャスティングはほぼ確定。
  • プロデューサーやキャスティングディレクターが関与している場合、正式な契約に進む可能性が高い。

2. 動物を単なる小道具として考えている現場の特徴

動物を**「演出上の装飾」** や 「背景の一部」 として考えている制作側は、動物の福祉や自然な動きを深く考えず、あくまで映像の見た目を重視 します。
こうした現場では、動物のストレスや安全性が軽視される可能性があり、プロダクション側は慎重に対応する必要があります。

🎬 問い合わせをしてくるのは…
美術スタッフやセットデザイナー(撮影セットの「オブジェクト」の一部として動物を配置したい)
広告代理店のリサーチ担当者(クライアント向けに「動物を使う案」を検討している段階)
演出アシスタントや制作進行(監督から「動物を使いたい」と言われたが、具体的な意図は不明)

📌 彼らの問い合わせ内容の特徴

  • 動物の行動や生態を考えない発言が多い
    • 例:「猫を背景に置きたいので、動かない猫を用意できますか?」
  • 動物の自然な動きを無視したリクエストをする
    • 例:「鳥をケージの中に閉じ込めたまま、じっとさせられますか?」
  • 動物の健康やストレスを考えない演出を求める
    • 例:「ライオンに吠えさせたいので、何か方法はありますか?」
  • 契約やギャラについて明確な話がない
    • 例:「ほんの数分のシーンなので、安く対応できますよね?」

🔴 結論:このような問い合わせは、動物が「単なる小道具」として扱われる危険がある

  • 動物の負担を軽視した撮影になりやすいため、プロダクションとしての判断が重要。
  • 撮影を引き受ける場合は、動物のストレスを最小限に抑える条件を明確にする。

3. 動物プロダクションが取るべき対応策

📌 動物を「キャスト」として扱う現場には…
動物の生態や演技に関するアドバイスを提供し、最適な動物を提案する
撮影現場での福祉管理を徹底し、安全な環境を確保する

📌 動物を「小道具」として扱う現場には…
動物の福祉と倫理基準を明確に説明し、無理なリクエストは拒否する
CGやアニマトロニクス(機械仕掛けの動物)を代替案として提案する
撮影契約に明確なガイドラインを含め、動物の健康を守る条件を設定する


4. まとめ:問い合わせてくる人物と内容で見極める

📌 動物キャスティングの本気度が高い問い合わせ
✅ プロデューサー、キャスティングディレクター、監督からの具体的な連絡
✅ 動物の演技、福祉に関する具体的な質問がある
✅ 予算や契約の話が明確

📌 動物を小道具として考えている問い合わせ
❌ 美術スタッフ、AD、リサーチ担当者からの曖昧な連絡
❌ 動物の自然な行動や福祉を考慮しないリクエスト
❌ 契約やギャラについて明確な話がない

問い合わせの**「送り手」** と**「内容」** を慎重に見極めることで、動物プロダクションは動物の安全と福祉を守りながら、適切な案件に対応することができる。

動物プロダクションとして長年この業界に携わる中で、「動物をキャストとして扱う制作現場」と「単なる小道具として考えている制作現場」の違い は、問い合わせの時点で明確に見えてきます。

しかし、その背景には、単純に制作側の意識の違いだけでなく、映像業界全体の構造的な問題 も影響しています。特に、低予算化が進む日本の映像業界では、「リアルな動物を使いたいが、コスト的に難しい」というジレンマを抱えている現場も少なくありません。

近年、映画やドラマ、CMの制作費は圧縮される傾向にあります。特に、デジタル配信の普及によって短期間で大量のコンテンツが求められる時代 になり、撮影の効率化やコスト削減が至上命題 となっています。その結果、CGやVFXと比較して、動物キャスティングにかかる費用や管理コストが敬遠されがち なのが現状です。

また、動物福祉の意識が高まる一方で、「動物を使う=リスクが高い」という考えから、現場での使用が避けられるケースも増えています。
そのため、「動物を撮影に使いたいが、予算的・倫理的に難しい」という現場が、まず情報収集目的で問い合わせをしてくる こともあります。こうしたケースでは、CGやアニマトロニクスを提案することも一つの解決策 になり得ます。

一方で、未だに「動物福祉」よりも「低予算」を優先し、昔ながらの考え方で動物を撮影に使おうとする“昭和のような現場”が多数存在するのも事実です。

「動物は演技しなくていいから、ただそこにいればいいだけだから」
「飼っている動物を連れてくるだけだから安く済むだろう」
「タイアップでペットショップに借りればいい」

こうした考えで動物を安く調達しようとする制作現場では、適切なトレーニングもケアもないまま、動物に過度なストレスをかける可能性があります。
撮影環境が整っていないため、動物の安全が確保されないことも多く、万が一事故が起これば制作側の責任問題にも発展しかねません。

しかし、こうした現場は未だに少なくなく、特に低予算の案件では「動物にお金をかけたくない」という意識が根強く残っています。

動物プロダクションとしては、現場の事情を理解しながらも、動物福祉を守ることを最優先にし、無理な撮影にはきちんとNOを言う姿勢が必要です。

動物は単なる「演出の道具」ではなく、命ある存在です。
撮影に関わるすべての人が、動物の福祉を守りつつ、映像作品としてのクオリティを追求できる環境を整えることが、これからの映像業界に求められる姿勢ではないでしょうか。

「動物を出すなら、それなりのコストと責任が必要」
「安く済ませるためにリアルな動物を使うのは、もはや時代遅れ」

この意識を業界全体で共有しなければ、動物の負担は減らず、映像制作の質も向上しません。

これからも、動物プロダクションとして、単なるキャスティング業務にとどまらず、動物を守る立場として適切な判断を下し、映像制作と動物福祉が両立できる未来を目指していきたいと思います。