動物プロダクション SCIENCE FACTORY ltd.

動物プロダクション サイエンスファクトリー

生きた昆虫と創る、リアルな世界。… 昆虫撮影の現場から

生きた昆虫と創る、リアルな世界。… 昆虫撮影の現場から

CGでは出せない“命のリアリティ”を、昆虫の力で。

昆虫撮影への姿勢と専門性

私たちの昆虫撮影は、ただ被写体を映すのではなく、昆虫という小さな命の営みに敬意を払い、その存在が持つ「生きている美しさ」を丁寧に映像に残すことから始まります。
昆虫は決して演技をするわけではありません。その代わりに、本能に従って動き、生きる姿そのものが物語であり、映像表現としての魅力にあふれています。

昆虫の撮影は一見シンプルに思えるかもしれませんが、実際には高度な専門知識と繊細な技術が必要とされる領域です。例えば、昆虫の種類によって好む環境条件は大きく異なり、同じ種でもオスとメスで行動が異なることもあります。また、光の角度や風の流れひとつでその動きは大きく変化するため、昆虫たちの自然な行動を引き出すには、細部にまで気を配ったセッティングが欠かせません

私たちは、そうした撮影の難しさと真正面から向き合い、昆虫を「演出」するのではなく、「理解」することに重点を置いた撮影スタイルを貫いています。これは、単なる美術セットの構築やライティング調整だけでなく、対象となる昆虫の生態・習性・動きのリズムに寄り添うことを意味します。
この姿勢は、映像を通じてリアリティと感動を届けるための礎であり、同時に昆虫に負担をかけずに撮影を行うという「命に対する誠実さ」にもつながっています。

また、私たちのスタッフは昆虫撮影の現場で豊富な経験を積み重ねており、映像クリエイターとしての視点と、昆虫飼育・観察者としての知識の両方を持ち合わせています。撮影現場では一瞬のチャンスを逃さない判断力と、あらゆる状況に対応できる柔軟な発想力が求められますが、それらを可能にするのは日々の観察と探究心です。

テレビCM、映画、教育映像、展示用コンテンツなど、昆虫を扱った映像には多様な目的があります。私たちはそれぞれの目的や世界観に応じて、昆虫たちの「その瞬間」をどう切り取るかを綿密に設計し、**「見せたい映像」ではなく「本当に伝えたい自然の姿」**を追求しています。

こうした姿勢を貫くことで、単なる昆虫の映像ではなく、「小さな命のドキュメンタリー」として、視聴者の心に届く映像づくりが実現できると私たちは信じています。

私たちの仕事は、撮影することそのものではありません。
昆虫という存在を通して、見る人に驚きや気づき、そして命への敬意を届けること。
それが、昆虫撮影に取り組む私たちの揺るぎない信念です。

本能・習性を活かした自然な撮影手法

昆虫を映像に収める際、私たちが最も大切にしているのは「自然な動きの再現」です。
昆虫は人間のように演技や指示に従うことはありません。しかし、だからこそ彼らが本能的に行う動きや反応には、他にはないリアリティと力強さが宿ります。私たちはそれを映像として最大限に引き出すために、昆虫たちの本来の習性を理解し、尊重する撮影手法をとっています。

例えば、昆虫の中には光に向かって飛ぶ「走光性」を持つ種類が多くいます。この習性を利用して、自然に飛び立つシーンや移動する動作を演出することが可能です。強い照明や刺激を使って無理に動かすのではなく、あくまで昆虫の意思で動いているように見せることが、私たちの目指す映像表現です。

また、アリやハチのような社会性昆虫は、フェロモンによって仲間と連携しながら行動します。このような特性を利用し、特定の物質を使って行動経路を誘導したり、集合行動を自然に引き出すといった撮影も行っています。
このような撮影では、事前に数週間にわたり行動観察を行うこともあり、撮影の一瞬に至るまでに多くの準備と検証を重ねているのです。

昆虫の撮影は、静止している場面よりも、「何かをしている」シーンに大きな価値があります。たとえば、カマキリが餌を狙う緊張感ある瞬間、チョウが花に止まり羽ばたく優雅なシーン、コオロギが羽を擦り合わせて音を鳴らす様子――それぞれに命のドラマがあります。私たちは、それぞれの種が持つ行動特性や活動時間帯、温度や湿度の好み、習性に合わせて環境を整え、自然な動きを自発的に引き出すように工夫しています。

このような撮影を可能にするには、昆虫に関する専門知識だけでなく、「待つ姿勢」も必要です。人間が望むタイミングで都合よく動いてくれるわけではありません。撮影の現場では、ライトを微調整し、空気の流れを変え、静かに時間をかけながら、その「動き出す瞬間」をひたすら待ち続ける場面も少なくありません。
しかし、そうして得られた一瞬の映像には、演出では再現できない、生命のリアルさと説得力が宿ります。

私たちが手がける昆虫撮影は、決して派手ではありません。しかしその裏には、昆虫の動きや性質を深く理解し、**「行動を引き出す技術」ではなく「行動を見守る技術」**を大切にする姿勢があります。
結果として、視聴者には「演出ではない、まるでドキュメンタリーのような真実味」が伝わり、昆虫の魅力がより深く、より感動的に伝わるのです。

こうした手法は、教育用映像や博物館展示、自然ドキュメンタリーなど、リアルな生きものの姿が求められる現場で特に評価されています。
私たちは今後も、昆虫たちの声なき声に耳を傾け、その行動の裏にある理由や意味に寄り添いながら、映像という形でその瞬間を記録していきます。

年間を通じて対応可能な飼育・養殖技術

昆虫の多くは季節性の生きものです。
春から夏にかけて活発に活動する種類が大半であり、野外ではその生息時期や成長段階に合わせた撮影に強い制約が生まれます。たとえば、チョウやセミ、カブトムシなどは限られた短い期間にしか姿を現さず、撮影スケジュールと自然のタイミングを合わせることは容易ではありません。

しかし、私たちはそうした季節の制約に縛られることなく、年間を通じた昆虫撮影を可能にする飼育・養殖技術を確立しています。
これにより、冬にカブトムシの撮影を行ったり、春先に夏のチョウを飛ばすといった、映像の制作スケジュールに柔軟に対応する体制を実現しています。

私たちが行う飼育管理では、各種昆虫の生態サイクルと必要な環境条件を徹底的に分析し、気温・湿度・光量・風通しなどを細かく制御した飼育空間を用意しています。これにより、昆虫たちは季節を錯覚し、本来の活動期と同様の動きを見せてくれます。
たとえば、日照時間を調整することで、昆虫の活動リズムを「夏」と誤認させ、活発な状態に導くことが可能です。これは、ただ温かい場所に置くだけの単純な加温ではなく、生理的な反応をうながすための複合的な環境制御によるものです。

また、特定の撮影に必要なステージ(卵、幼虫、成虫など)での昆虫の確保も可能です。映像の内容に応じて、「脱皮の瞬間を撮りたい」「幼虫が蛹になる変化を記録したい」といったリクエストにも、あらかじめ成長過程を管理することで対応することができます。これにより、自然下ではタイミングを合わせることが難しいシーンも再現可能となります。

私たちは、飼育そのものを単なる在庫管理とは考えていません。
それぞれの昆虫の**「命のリズム」や「快適に過ごせる環境」**を第一に考え、昆虫が自然体で生きられるよう日々の観察と調整を行っています。栄養管理や衛生状態の維持にも気を配り、昆虫たちが健康な状態で撮影に臨めるよう、細心の注意を払っています。

このような飼育技術とノウハウは、一朝一夕で構築できるものではありません。長年にわたり、さまざまな種類の昆虫の繁殖と飼育を手がけ、現場のニーズに合わせて改善を重ねてきた経験の積み重ねが、現在の高い対応力と信頼性につながっています。

また、屋内施設での飼育だけでなく、屋外環境を再現した半自然環境での養殖も取り入れており、撮影用途に応じた多様なシチュエーションづくりが可能です。これにより、「自然の中での生き生きとした姿」を再現することもできます。

撮影のスケジュールや内容が決まった段階で、必要な種類の昆虫を、必要な時期・状態でご用意できる体制を整えている――
それが、私たちの昆虫撮影における強みのひとつです。
「昆虫がいないから撮れない」という制約を乗り越えることで、作品制作の自由度と完成度を高めることができるのです。

私たちはこれからも、昆虫の命を大切にしながら、その魅力を一年中お届けできるよう、飼育技術と環境づくりに磨きをかけてまいります。

安定供給を支える広いネットワークと体制

昆虫を撮影に使用するということは、「生きた昆虫を、撮影当日に、確実に、必要な状態で手配できる」体制が求められます。
自然環境の変化や季節の移り変わりに左右されやすい昆虫だからこそ、いつでも、どこでも、同じクオリティで対応できる信頼性が非常に重要です。

私たちは長年にわたり、昆虫撮影に関わる現場のあらゆる課題と向き合いながら、安定した昆虫の供給体制を構築してきました。
その中心にあるのが、各地の信頼できる昆虫飼育者やブリーダー、教育機関、農業施設との広範なネットワークです。これらのネットワークは、特定の種類に特化したプロフェッショナルとの連携によって成り立っており、季節や地域に関係なく、安定的に昆虫を調達・管理することができます。

もちろん、私たち自身の飼育施設でもさまざまな種類の昆虫を年間通して育成・管理しており、社内での安定供給体制と外部ネットワークを組み合わせた柔軟な対応力が、大きな強みとなっています。たとえば、「明るい場所に集まる虫が必要」「幼虫の状態で数日管理したい」など、制作現場からの具体的なリクエストに対して、複数のルートを使って対応できる選択肢の多さが、信頼される理由のひとつです。

さらに、撮影に使用する昆虫の移送には細心の注意を払っています。温度や湿度の変化に敏感な昆虫に対しては、専用の輸送ボックスや気温調整のための資材を用いて、生体に負担のかからないよう細かく配慮した輸送方法を徹底しています。
現場到着後も、撮影前に昆虫がリラックスできるよう一時的な調整空間を設けたり、移動疲れを最小限にする時間管理を実施したりと、「搬送も撮影の一部」と捉える姿勢で取り組んでいます。

また、万が一に備えた予備個体の準備や撮影直前の健康チェックなど、現場でのトラブルを未然に防ぐための安全策も徹底しています。こうした対応により、テレビCM、教育番組、展示映像など多様な制作現場において、「急な変更にも強い」「安定していて安心できる」といった評価をいただいています。

ネットワークは、単に生体を手配するための「供給ライン」ではありません。信頼と協力関係を築いた上で成り立つ、長期的なパートナーシップであり、その関係性こそが、継続的な撮影対応や難しい要求への柔軟な対応を可能にしています。

さらに、私たちのネットワークは地域的な偏りがなく、全国各地のプロフェッショナルとつながっているため、ロケ地に近い場所での調達・搬送を可能にするなど、物流面での効率化と安全性も高めています。 これにより、現場における時間やコストの負担を軽減しながら、撮影のクオリティを維持することができています。

私たちはこれからも、ネットワークの信頼性を土台に、生体管理の精度・柔軟なオペレーション・現場対応力の向上を重ねてまいります。
「欲しい昆虫を、必要なタイミングで、ベストな状態で」――それを当たり前にするために、日々の準備と信頼関係を何より大切にしています。

昆虫に優しい環境づくりと丁寧な管理

昆虫を映像作品に登場させる際、私たちが最も大切にしているのは、**「撮影のために昆虫に無理をさせないこと」**です。
私たちは昆虫をただの“素材”とは捉えていません。彼らもまた、小さくとも確かに呼吸し、環境に反応し、生きている命です。その命に寄り添い、できる限り負担をかけないかたちでその魅力を引き出すことこそが、映像に生命感を宿らせる最も大切な要素だと考えています。

撮影現場では、昆虫にとっての快適な環境を整えることが基本です。たとえば、撮影用の照明は人間にとっては明るくても、昆虫には強すぎる刺激となる場合があります。
そのため、私たちはライティングの配置や光の強度・角度を細かく調整し、**昆虫の目や行動に影響を与えにくい「やさしい光」**を使った撮影を行います。特に夜行性の昆虫などは、光源の色温度や波長に敏感であるため、自然に近い光環境の再現にも工夫を凝らしています。

また、温度や湿度といった環境条件は、昆虫の活動性に直結する重要な要素です。
私たちはあらゆる撮影現場で、昆虫が自然な状態でいられる温湿度を維持できるよう、ポータブルな環境調整機材を常備し、状況に応じてきめ細やかな管理を行っています。
移動中のストレス軽減にも気を配り、昆虫専用の通気性に優れた容器や緩衝材を使用して、安全で落ち着ける輸送環境を提供します。

さらに、撮影の合間にも定期的に休息時間を設け、昆虫が疲れたり過剰に刺激を受けたりしないように管理しています。これは、昆虫に対する配慮であると同時に、最も自然で美しい姿を引き出すための大切な準備でもあります。無理に動かそうとすれば、ぎこちない動きや不自然な反応が生じますが、安心して動ける環境が整えば、昆虫たちは本来のしなやかさとリズムを見せてくれます

こうした配慮の積み重ねは、撮影後の管理にも及びます。撮影を終えた昆虫たちは、必要に応じて私たちの施設で引き続き飼育管理されるほか、野外に戻すことができる種類については適切な場所と時期を選んで自然へ還す取り組みも行っています。命ある生きものとして、最後まで責任を持って向き合う姿勢を大切にしています。

私たちの撮影方針には、「効率よりも、命への敬意を優先する」という考えが一貫しています。
たとえば、何度も撮り直しを重ねるよりも、昆虫が自然に動き出すその瞬間をじっと待ち、昆虫のペースに合わせた撮影を行う方が、結果的にリアルで心に残る映像につながるのです。

このような昆虫への優しい姿勢は、撮影に立ち会うスタッフやクライアントの方々からも多くの共感をいただいています。教育関係や自然系の番組・映像に携わる方々からは、「扱い方を見て安心した」「生きものに対する姿勢が伝わってきた」とのお声を多く頂戴しています。

昆虫は小さくても、かけがえのない命です。
その命を撮影において「生かす」ためには、テクニックよりもまず、まなざしと思いやりが必要です。
私たちはこれからも、どんな現場でもこの姿勢を忘れることなく、昆虫が健やかに過ごせる環境を守りながら、映像の中でその魅力を伝えていきます。

映像の世界において、昆虫はときに季節を象徴する存在として、ときに物語の雰囲気を彩る静かな演者として、その姿を求められます。特にドラマや映画の撮影現場では、「春の訪れを告げるチョウ」「夏の情景を象徴するカブトムシ」といった情緒的な演出にリアルな昆虫を使いたいというご相談をいただく機会が増えてきました。

しかしその一方で、残念ながら現場の多くは「リアルな昆虫を使うことの難しさ」を過小評価している傾向があります。
「昆虫プロダクションに頼めば、いつでもどこでも蝶々が飛んでくる」――そんなイメージを持ってお問い合わせいただくことも少なくありません。実際には、生きた昆虫を撮影に使用するには、長期的な準備と計画性が不可欠です。

昆虫は生きものです。撮影に最適な状態で動いてもらうためには、時間をかけて環境を整え、育て、調整し、状態を見極める必要があります。
私たちはそのための専門的な知識と技術を持っていますが、それでも自然の生きものが持つ「個体差」や「気まぐれ」を完全にコントロールすることはできません。
撮影日直前になって「来週撮影だからチョウを用意してほしい」といったご依頼をいただいても、十分な準備期間なしに対応することは極めて困難です。

また、CGやVFXの技術が進化した今、あえて「本物の昆虫」を使うことの意味は、作品に深みとリアリティを加える特別な選択である一方、その分、予算面や時間的コストが大きく跳ね上がる可能性もあるということをご理解いただきたいのです。
「リアルな昆虫で、しかも自然な動きで」と望まれるのであれば、そのクオリティに見合った制作スケジュールと体制の準備が必要になります。

私たちは、命を預かりながら映像を作るという責任の重さを誰よりも理解し、日々の撮影に臨んでいます。
そのため、「ただの小道具」としてではなく、一つの生きものとして昆虫と向き合う姿勢を持つ方々と、よりよい作品づくりをしていきたいと願っています。

リアルな昆虫の力を借りるという選択が、作品に真のリアリティと温度を吹き込むものであると同時に、その裏にある丁寧な準備と配慮の積み重ねを知っていただけるきっかけになれば幸いです。