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温暖化と耕作放棄地が生む新たな生態系リスク|野生動物と人間社会の未来を考える

温暖化と耕作放棄地が生む新たな生態系リスク|野生動物と人間社会の未来を考える

地方過疎と温暖化が進む今、森で何が起きているのか?

野生動物たちと人間社会のあいだで深まるあつれき。
生態系の未来と私たちの暮らしに迫る、新たなリスクを読み解きます。

温暖化と耕作放棄地がもたらす新しい生態系と人間社会へのリスク

〜都市集中、地方過疎、そして温暖化が加速させる「野生動物問題」とは〜


はじめに

近年、地方の過疎化、耕作放棄地の増加、そして地球温暖化の進行という三つの要因が重なり、
日本各地で野生動物の個体数が急増しつつあります。
その影響は生態系の変化にとどまらず、農作物被害、交通事故、感染症リスクなど、
私たち人間社会にもじわじわと深刻な影響を与え始めています。

東京農工大学の研究チームによる最新の報告では、
この問題が単なる一時的な現象ではなく、**「温暖化時代の新しい生態系リスク」**であることが指摘されています。

本記事では、
✅ 原因となる社会・環境変化
✅ 地域ごとのリスク
✅ 野生動物ごとの影響
✅ 未来予測(温暖化シナリオ別)
をわかりやすく整理し、これからの私たちに求められる対応策を考えます。


なぜ今、野生動物問題が拡大しているのか?

都市集中と地方過疎

  • 地方では農業や林業の担い手が減少し、耕作放棄地が急速に増えています。

  • 人間の手が入らなくなった里山や農地が、野生動物にとって「理想の隠れ家」と化しました。

地球温暖化の影響

  • 冬季の積雪量が減り、これまで冬眠や活動制限を余儀なくされていた動物たちが、
     冬でも自由に行動・繁殖できるようになったのです。

  • エサ不足による自然淘汰も減少し、結果として個体数が急増しています。


地域別に見るリスクの現状

地域主なリスクと特徴
北海道エゾシカ、ヒグマの個体増。森林植生破壊や出没リスク増大。
東北地方ニホンジカとツキノワグマによる農林被害。イノシシ北上。
中部・近畿シカによる森林破壊。イノシシが果樹園・棚田を荒らす。
中国・四国・九州サルやイノシシによる農作物被害。外来種(ハクビシンなど)定着。

対象種別に見る影響と問題点

動物影響
ニホンジカ繁殖増加で森林を食い尽くし、生物多様性低下。
イノシシ通年活動で農作物への被害拡大。土壌荒廃も進行。
ニホンザル農地侵入と都市周辺への出没リスク増大。
ツキノワグマ冬眠期間短縮。人里出没のリスク上昇。
外来種(ハクビシン等)温暖化で北上、生態系や農業に新たな被害。

温暖化シナリオ別、2100年に待ち受ける未来予測

RCPシナリオ(温暖化の進行度合いを示す世界共通基準)に沿った未来予測です。

シナリオ2100年の想定影響とリスク
RCP2.6(理想型)+1〜1.8℃上昇現状とほぼ同等。野生動物対策も現行の延長で対応可能。
RCP4.5(中程度)+1.7〜3.2℃上昇シカ・イノシシ爆発増加。農林業や都市生活に深刻な影響。
RCP6.0(現状維持)+2.0〜3.7℃上昇外来種の北上進行、感染症リスク拡大。
RCP8.5(最悪)+3.2〜5.4℃上昇生態系崩壊レベル。社会インフラ全体を揺るがす大問題に。

これから私たちに求められる対策とは?

  • 科学的モニタリングで早期発見・早期対策を

  • 地域特性に応じた野生動物管理(一律駆除ではなく、持続可能な共存を目指す)

  • 農地・里山の再生利用による生息地コントロール

  • 都市計画、防災、感染症対策と連携した広域的なリスク管理

  • 国際的な温暖化対策への主体的参加


まとめ

野生動物問題は「自然に任せておけばいい」というレベルを超え、
私たちの暮らし、経済、健康に直結する社会課題になりつつあります。

温暖化と耕作放棄地の拡大は、これまでの常識を覆す速さで日本の生態系を変えようとしています。
この現実を正しく知り、適切に対応していくことが、
未来の社会を守るために欠かせない「新しい防災」と言えるでしょう。